2024/01/11
「右上の奥歯が痛い」とご来院いただきました。
右上奥歯(第1大臼歯/6番)に金の詰め物があり、そこで痛みが生じていたため、金歯を外して中を確認した結果、歯にひびが生じていました。
詳しい検査を行うためCTを撮影したところ、ひびが原因で根の周りに細菌感染と炎症が広がり、膿の袋が形成されていることがわかりました。
この歯のすぐ上には、鼻の空洞である「上顎洞」が存在します。今回の炎症はこの上顎洞まで及んでおり、鼻水や鼻詰まりを引き起こす「上顎洞炎」も併発していました。
痛みや炎症を改善するためには、原因となる歯の内部を清掃する「根管治療」が必要と診断しました。
CTと歯科用のマイクロスコープを活用し、根の中の状態を確認しながら痛みや炎症をしっかり取り除くことができる精密な根管治療をご提案しました。
これにより、肉眼では観察が難しい部位に対しても正確な処置が可能になり、感染の再発リスクも低くなります。
治療に同意いただき、まずは精密な根管治療を開始して、歯の内部の感染組織を丁寧に取り除きました。
痛みが解消されたことを確認してから、歯に適した土台を設置し、適合の良いセラミックの被せ物を装着して治療を完了しました。
約200,000円
【内訳】
精密根管治療(3根管)
土台(ポスト)
セラミックの被せ物
歯の周りの炎症や膿の袋が消失し、上顎洞炎も完治しました。
患者様にも「痛みがなくなり、日常生活も快適になった」と大変お喜びいただきました。
現在も定期検診でご来院いただいており、感染の再発もなく、良好な口腔内を維持しておられます。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
2024/01/06
「奥歯に根の病気が見つかり、抜歯してインプラント治療が必要と診断された。歯を残せるか見てほしい」とセカンドオピニオンでご来院いただきました。
拝見したところ、左下奥歯(第2小臼歯/5番)の根の周りに感染が認められました。
レントゲン上では膿の袋である「根尖病巣」が確認でき、歯を支える骨が大きく溶けている状態でした。
根尖病巣の原因は歯の内部まで大きく進行した虫歯であり、歯を残すためには根の中をきれいにする「根管治療」が必要です。
患者様は「再発しないようしっかり治したい」とご希望でした。
虫歯を取り除いてから、歯科用のマイクロスコープを使用した精密な根管治療で根尖病巣を改善する治療をご提案しました。
マイクロスコープを使用することで、肉眼では観察が難しい部位にもより確実な処置が可能になり、抜歯を回避できる可能性が高まるだけでなく、感染の再発リスクも低下します。
治療に同意いただき、まず虫歯部分を丁寧に削ってから、精密な根管治療により感染組織をきれいに取り除き、薬を詰めました。
その後、歯を補強するための「ファイバーポスト」を用いて土台を構築し、適合と耐久性に優れたプラチナの部分的な被せ物で修復しました。
約120,000円
【内訳】
精密根管治療(1根管):30,000円
ファイバーポスト:20,000円
プラチナの被せ物:70,000円
根尖病巣が縮小し、歯を温存することができました。
患者様にも「自分の歯を残すことができて嬉しい」と大変ご満足いただきました。
現在は定期的な検診でご来院いただいており、虫歯や根の感染の再発もなく良好な経過をたどっています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・被せ物の装着に際し、天然歯を削る必要があります
2024/01/05
「昔別の医院で治療したところが噛むと痛い」とご相談いただきました。
拝見したところ、被せ物が入っている右下の奥歯(第1大臼歯/6番)に「根分岐部病変」が認められました。
下の奥歯は複数の根があり、その分かれ目に細菌感染が起きて歯を支える骨が溶けてしまうのが根分岐部病変です。
根分岐部病変は、歯周病によるものと歯の根の感染が原因のものがあります。診断のために「アクセサリーポイント(ガッタパーチャー)」と呼ばれる細い棒を使用し検査したところ、炎症は根の先まで及んでおり、根の感染が原因であることが確認できました。
この歯は以前、根の中をきれいにする「根管治療」を行っていましたが、それが不十分だったことが今回の感染の原因と考えられます。
患者様は「再発しないように治療したい」とご希望でした。
歯科用のマイクロスコープを使用した精密な根管治療で、根の中を再びきれいにし感染と痛みを解消する治療をご提案しました。
マイクロスコープによって肉眼では観察が難しい部位に対しても正確な処置が可能になり、感染の再発リスクも低くなります。
治療に同意いただき、最初に古い被せ物を取り外しました。
歯を補強するための金属製の「ポスト」が根に入っていましたが、長くて太さもあり、無理に外すと歯が割れる可能性があります。ポストはそのまま温存し、根管治療が不十分だった1本の根に対して、精密根管治療で感染組織を丁寧に取り除き、薬を詰めました。
痛みが消失したことを確認してから、しなやかな材質の「ファイバーポスト」を用いて土台を構築し、自然な白さのセラミックの被せ物を装着しました。
約190,000円
【内訳】
精密根管治療(1根管):30,000円
ファイバーポスト:40,000円
セラミックの被せ物:120,000円
右の奥歯で痛みもなく噛めるようになりました。
患者様にも「食事のときも痛くない。丁寧に治療してもらえて良かった」と大変お喜びいただきました。
現在も定期検診でご来院いただいており、根の感染の再発もなく経過しています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
2023/12/28
はじめに
近年、根管治療におけるマイクロスコープの使用が注目を集めています。歯科医療技術の進歩は目覚ましく、特にマイクロスコープは根管治療の質を飛躍的に向上させる重要なツールとされています。しかし、この技術には利点だけでなく、いくつかのデメリットも存在します。本記事では、根管治療にマイクロスコープがなぜ欠かせないのか、日本におけるマイクロスコープの普及率、そしてそのデメリットについて専門的な視点から解説します。
根管治療とは?
根管治療は、感染した歯の神経(歯髄)を取り除き、歯を保存する治療法です。この治療は、虫歯が進行して歯髄まで達した場合や、歯髄が炎症を起こした場合に行われます。
マイクロスコープの必要性
■精密な視覚化
根管治療では、非常に緻密な作業が必要です。マイクロスコープを使用すると、歯の内部の狭い空間を高倍率で詳細に観察でき、治療の精度が大幅に向上します。
■正確な治療
根管治療の成功は、正確な根管の清掃と充填に依存しています。マイクロスコープを用いることで、微細な根管も見落とすことなく、より確実な治療が可能になります。
また削る量は最小限で悪い部分だけ確実に治療することができます。
治療後の再感染を防ぐためにも、詰め物や被せ物を入れたときに隙間がないことが重要です。マイクロスコープは削る面を最大20倍に拡大できるので、切除面を細密に形成することが可能です。
■治療の成功率の向上
マイクロスコープの使用は、治療の成功率を著しく向上させます。これは、視覚化された情報に基づいて正確な判断ができるためです。
■患者様への情報共有
マイクロスコープにはCCDカメラを搭載しています。治療中、虫歯や根管の状態をモニターに映し出し、患者さんのお口の中を一緒に確認していただけます。
万が一抜歯が必要でも、お口の中の映像や静止画像を見ていただくことで、その理由を納得し安心して治療を受けることができます。
日本におけるマイクロスコープの普及率
日本における歯科医院でのマイクロスコープの普及率については、現在約10%程度とされています。
日本での普及が進まない理由として、マイクロスコープの操作に習熟するまでに時間がかかることが挙げられます。また、マイクロスコープの導入には高いコストが伴うことも、普及が進まない一因と考えられています。
マイクロスコープの使用は、特に根管治療やクラック(亀裂)の確認、虫歯の除去、精密な形成と補綴物など、様々な治療でその有効性が認められています。高倍率での観察により、肉眼では見えない微細な部分まで詳細に観察でき、治療の精度が向上します。また、画像の保存や共有も可能で、患者さんとのコミュニケーションを助け、治療に対する理解と信頼を深めることができます。
しかし、マイクロスコープを使用すると1回の治療時間が長くなる可能性があるため、保険診療が中心の歯科医院では導入が難しい場合もあります。また、治療費が高くなるため、患者さんの利用率が上がらないことも、普及が進まない要因の一つです。
マイクロスコープのデメリット
しかし、マイクロスコープを使用する根管治療には、以下のようなデメリットもあります。
■コスト
マイクロスコープを用いた治療は、標準的な治療に比べて高額になる傾向があります。これは、高価な機器の購入と維持、および専門的なトレーニングが必要であるためです。
■技術的な要求
マイクロスコープを使用するためには、高度な技術と練習が必要です。すべての歯科医師がこの技術を習得しているわけではなく、専門性が高まるほど、利用可能な治療者の数は限られます。
まとめ
マイクロスコープを用いた根管治療は、その精度と成功率の高さにより、現代の歯科医療において重要な役割を果たしています。しかし、高コスト、治療時間の増加、技術的な要求など、いくつかのデメリットも存在することを理解することが重要です。特に歯科医師のトレーニングと技術の習得には時間とリソースが必要です。
マイクロスコープは根管治療において欠かせないツールであり、その精度と成功率の向上に大きく貢献しています。しかし、日本での普及率はまだ低く、高コスト、操作の難しさ、治療時間の増加などの課題もあります。これらの課題を克服し、より多くの歯科医院でマイクロスコープが使用されることを期待し、今後の歯科医療の進展に注目していきたいと思います。
※保険診療の場合、マイクロスコープは使用していません。ご了承ください。
当院のマイクロスコープ治療の様子
当院の根管治療の症例
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/11/27/1438/
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/07/07/1298/
この記事の監修
武内歯科医院 院長 武内 清隆
当院では、お口の中の健康とお口周りの美しさをトータル的に考えた治療を心がけています。歯科医院の目的は、虫歯・歯周病の歯の治療です。しかし最も力を入れるべきことは、虫歯や歯周病にならないための予防指導だと考えます。
プラークコントロールや歯の健康診断を定期的に受けることで大切な歯を守れるのです。丈夫で健康な歯は、何でも美味しく食べることができ、いつまでも若々しい口元と笑顔を保てます。当院の指導で、ご自分の歯で末永く健康にいきいきお過ごしいただきたいと思っています。
【経歴】
1994年
東京歯科大学卒
1994年
武内歯科医院勤務
1994年
林歯科医院勤務
1996年
林歯科医院退職
1996年
葉山町武内歯科医院勤務
2000年
葉山町武内歯科医院退職
2000~2001年
聖路加病院口腔外科研修
2014年
武内歯科医院継承
【取得資格】
日本歯周病学会認定医
日本顎咬合学会咬み合わせ認定医
日本顎咬合学会一般口演優秀発表賞受賞
【所属学会】
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
日本歯内療法学会
【論文】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』
2005年
JCPG会報『エムドゲイン ゲルを用いた歯周治療』
2013年
日本歯科評論誌3月号『IPS e.max臨床応用のポイント』
【学会誌】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』
2023/11/30
歯の健康は、全体的な健康と幸福において重要な役割を果たします。中でも、根管治療は歯科治療の中でも特に重要な部分を占めます。今日は根管治療の成功率や再発率、特に根の治療技術と被せ物の技術が成功や再発にどのように影響を与えるかについて、詳しく解説していきます。
根管治療とは
根管治療とは、歯の根の中にある神経組織や血管を取り除く治療です。虫歯や歯の破損が原因で神経が感染したり、炎症を起こしたりする場合に行われます。この治療により、感染を取り除き、歯を保存することができます。
根管治療の成功率
日本における根管治療の成功率は残念ながら高くなく、約30%〜50%の成功率となります。裏を返せば50%〜70%の根管治療が再発をしてしまっているという事です。
しかし、この成功率は歯科医師の技術や使用される機材や材料(マイクロスコープなど)に大きく依存します。
再発率と治療技術の関係
根管治療後の再発率は、根の治療技術と被せ物の技術の両方に依存します。以下に、それぞれの関係性について詳しく見ていきましょう。
①根の治療技術
根の治療技術が高い場合、つまり適切な消毒が行われ、ラバーダムなどの適切な材料が用いられた処置の場合、根管内の感染リスクが低減され、再発の可能性も低くなります。
特に根の治療に関してはマイクロスコープ(高精度の顕微鏡)を用いて行う治療をお勧めしています。マイクロスコープは最大で20倍まで拡大できるので、今まで肉眼で確認できなかった歯の細かな凹凸や隠れている根管まで発見できます。また、補綴物と歯肉の間にできる隙間も確認できるので、精度の高い治療が可能です。
しかし、根管治療の成功はこれだけでは十分ではありません。
②被せ物の技術
根の治療技術が優れていても、被せ物の技術が劣っていると、再発率は高くなります。
理由はシンプルで、精度が低い被せ物は、隙間や不完全な密閉が原因で新たな感染を招きやすく、治療した根管部位が再び問題を起こすリスクが高まります。
逆に、根の治療技術が平均的であっても、被せ物の技術が高ければ、再発率は低くなることが多いです。これは、被せ物が歯を保護し、感染を防ぐ役割を果たすためです。
再発を防ぐために
根管治療後の再発を防ぐためには、以下の点に注意することが重要です。
①治療前の正確な診断:治療前に正確な診断を行うことで、治療計画を適切に立てることができます。
②高い技術を持つ歯科医師:根の治療と被せ物の両方で高い技術を持つ歯科医師に治療を依頼することが重要です。
③適切なアフターケア:治療後の適切なアフターケアが、再発のリスクを減少させます。
④定期的な検診:治療後の定期的なプロによるチェックにより、早期に問題を発見し、対処することができます。
⑤良質な材料の使用:根管充填材や被せ物の材料には、品質に大きな違いがあります。優れた材料を使用することで、長期的な成功率を高めることが可能です。
治療の選択とリスク管理
根管治療を選択する際には、治療のリスクと利点を理解し、歯科医師と十分に相談することが重要です。治療計画は、患者の特定の状況やニーズに合わせてカスタマイズされるべきです。また、治療後のケアに関する指導も不可欠です。
まとめ
根管治療の成功率と再発率は、多くの要因に依存しますが、特に根の治療技術と被せ物の技術が重要です。これらの技術が高いほど、治療の成功率は高まり、再発率は低下します。
患者としては、経験豊富で技術的に優れた歯科医師を選び、治療後の適切なケアを行うことが重要です。根管治療は、正しく行われれば、多くの場合で歯を救い健康的な生活を保つことができます。
最後に、根管治療は口腔衛生の全体的な健康の一部であることを忘れないでください。
定期的な検診と適切な日々のケアが、口腔衛生を維持し、将来的な問題を防ぐのに一番重要です。
今日の記事があなたの歯の健康管理にお役に立てれば幸いです。
当院の根管治療の症例
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/11/27/1438/
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/07/07/1298/
この記事の監修
武内歯科医院 院長 武内 清隆
当院では、お口の中の健康とお口周りの美しさをトータル的に考えた治療を心がけています。歯科医院の目的は、虫歯・歯周病の歯の治療です。しかし最も力を入れるべきことは、虫歯や歯周病にならないための予防指導だと考えます。
プラークコントロールや歯の健康診断を定期的に受けることで大切な歯を守れるのです。丈夫で健康な歯は、何でも美味しく食べることができ、いつまでも若々しい口元と笑顔を保てます。当院の指導で、ご自分の歯で末永く健康にいきいきお過ごしいただきたいと思っています。
【経歴】
1994年
東京歯科大学卒
1994年
武内歯科医院勤務
1994年
林歯科医院勤務
1996年
林歯科医院退職
1996年
葉山町武内歯科医院勤務
2000年
葉山町武内歯科医院退職
2000~2001年
聖路加病院口腔外科研修
2014年
武内歯科医院継承
【取得資格】
日本歯周病学会認定医
日本顎咬合学会咬み合わせ認定医
日本顎咬合学会一般口演優秀発表賞受賞
【所属学会】
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
日本歯内療法学会
【論文】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』
2005年
JCPG会報『エムドゲイン ゲルを用いた歯周治療』
2013年
日本歯科評論誌3月号『IPS e.max臨床応用のポイント』
【学会誌】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』